NPO東海生研 コーディネーター 野口正樹
近い将来の高齢化社会に向けて、国を挙げての各種の健康寿命延伸の取り組みがされるなか、機能性食品としてのショウガの仲間への関心が高まっています。香辛野菜として、古くから栽培・利用されてきたショウガは、多様な機能性が脚光を浴び、注目されています。ショウガ科には食用・薬用植物として、ショウガ、ミョウガ、ウコン、黒ウコンなどがあります。
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Ⅰショウガ Zingiber officinale ROSC.
熱帯アジアが原産と言われ、中国から伝わったと考えられています。主に薬用として栽培されていましたが、江戸時代頃から一般的な食用へと広まったようです。
1. ショウガの種類・品種は、3種に分けられます。
- 大ショウガ: 近江生姜など
根茎の部分が大きくなる品種で、1株で1kg 以上にもなります。一般に流通しているショウガです。 - 中ショウガ: 三州ショウガなど
1株の大きさが500g前後で、主に漬物や加工品に利用されます。 - 小ショウガ: 谷中生姜など
1株の大きさが300g前後で、「はじかみ」などに利用されます。
2. ショウガは用途によって呼称が異なり、食べ方として薬味、香辛料、甘酢漬け、しょうが湯、しょうがシロップなどがあります。
- 根しょうが
秋頃に収穫した根茎を貯蔵して、随時出荷されるので、通年出回っています。 - 新しょうが
初夏に収穫される根茎のことで、貯蔵せずに繊維が柔らかくてみずみずしい状態で、甘酢漬けなどに利用されます。 - 葉しょうが
根茎に茎葉が付いたもので、5~9月頃、甘酢漬けにしたり、味噌をつけてそのままたべたりします。
3. ショウガの注目成分として、ジンゲロール、ショウガオール、シネオールがあげられます。
ショウガの辛み成分は「ショウガオール」や「ジンゲロール」などによるもので、これらの成分には血行を良くし、体を温める作用があるため、冷え性対策によいとされます。また、ジンゲロールは強い殺菌力を有します。
なお、ショウガを乾燥する過程で、ほぼ全てのジンゲロールはショウガオールに変化するようです。
香り成分シネオールは、香りで食欲を増進し、殺菌効果で食中毒を予防できます。機能性表示食品制度が始まり、機能性食品の説得力を高めているようです。(株)伊藤園のサプリメント商品「国産しょうが」は、機能性関与成分を6-ショウガオールとしています。そして「寒い季節や冷房条件下において体温(末梢)を維持する機能があることが報告されています」と表示しています。
また、ショウガの脳機能改善作用に関する研究が進んでおり、認知症などの神経変性疾患の予防や進行抑止に効果的であることが明らかにされており、ブレインサプリや ブレインフーズへの期待が高まっています。
4. ショウガを使ったレシピはいろいろあり、料理にアクセントを付けるとともに、健康にも寄与する食材です。
ショウガを使ったレシピはいろいろあり、料理にアクセントを付けるとともに、健康にも寄与する食材です。
ショウガは特有の香りと辛味を持つ薬効の高い野菜で、おもに香辛料として利用されます。肉や魚の消臭効果をはじめ殺菌作用や解毒作用、さらには血行をよくする働きもあり、風邪予防や冷え症対策としても使われます。
Ⅱウコン
ウコンは、被子植物門・単子葉植物綱・ショウガ目・ショウガ科・クルクマ属に分類される多年生植物で、花は咲くが種子はできず、根茎で繁殖(栄養繁殖)します。インドが原産地と言われています。。
1. ウコンは50種類以上あると言われていますが、日本で馴染みの深いのは3種です。
- 春ウコン(キョウオウ)Curcuma aromatic SALISB.
春にピンク色の花をつけ、根茎は鮮やかな黄色を示します。 - 秋ウコン(ウコン)Curcuma longa L.
初秋に白い花をつけ、根茎は濃いオレンジ色を示します。 - 紫ウコン(ガジュツ)Curcuma zedoaria ROSC.
春に紫がかった赤い花をつけ、根茎は白っぽい紫色を示します。根茎の色の違いは、クルクミンの含有量に関係しているようです。
2. ウコンの種類によって機能性成分に大きな違いがあります。
- 春ウコン: 春ウコンにクルクミン(0.3%)はそれほど含まれていません。しかし、精油成分(6%)が多く含まれ、健胃効果や血圧の低下など、秋ウコンにはない効能 がたくさんあります。
- 秋ウコン: 根茎は濃いオレンジ色で、クルクミン(1.1~4.8%)を多く含んでいます。一方、精油成分(1~5%)は春ウコンより少ない量です。沖縄では民間療法の薬として、根茎を摺り下ろしてお湯を注いでお茶代わりに飲用するようです。黄色い色素成分のクルクミンは、肝細胞の活性化、胆汁の分泌促進、抗酸化、解毒、抗菌といった作用をもつ、すぐれた薬効成分であり、注目度が上昇しています。
- 紫ウコン: クルクミン(0.0%)はほとんど含んでいません。しかし、春ウコンよりさらに多くの精油成分を含んでいます。精油成分としては、ターメロン、シネオール、 カンファーなどが知られています。
3. 機能性表示食品制度では、(株)セラバリューズのサプリメント商品「肝臓の健康にセラクルミン」は、機能性関与成分をクルクミンとしています。
そして「本品にはクルクミンが含まれるので、健康な人の肝臓の機能の一部である肝機能酵素(GOT、GPT、γ-GTP)に対して健常域で高めの数値の低下に役立ち、健康な肝臓の機能を維持します」と表示しています。
4. ウコンの根茎に含まれるクルクミンは、黄色い染料の原料として広く用いられてきました。
色素としては、ウコン色素、クルクミン、ターメリック色素などのように表記され、伝統的な用途例としては、漬け物、水産練り製品、栗のシロップ漬、和菓子などが上げられます。
また、ウコンはアルコール・二日酔い・肝機能対策の代表格として、ドリンクタイプ、サプリメント(粒・顆粒)、茶製品など、350億円規模の市場を形成しているとも言われています。
「ウコンの力」液体
「ウコンの力」顆粒
「沖縄純粋ウコン」粉末
Ⅲ 黒ウコン Kaempferia parviflora Wall.ex Baker
黒ウコンは、主に東南アジアで栽培されているショウガ科バンウコン属の植物で、その根茎は伝統医療に用いられています。近年、黒ウコン機能性成分に関する研究が進展し、黒ウコン利活用への関心が高まっています。
1. 黒ウコンは、根茎は鮮やかな紫色を呈し、アントシアニンを豊富に含んでいます。
その他ポリフェノール系フラボン類として、ポリメトキシフラボンを多く含み、アピゲニン、クリシンを少し含んでおり、多様な機能性を有するのが特徴です。
2. 黒ウコン機能性成分が評価されて注目度が高まっています。
種々のポリメトキシフラボンを含有することからダイエット、抗糖尿病、アンチエイジング、滋養強壮、強精、抗疲労、美容、美肌、抗鬱、抗ウイルス、消化器病改善などを目的として幅広く利用されます。
- 黒ウコンに含まれるポリメトキシフラボンは、多様な機能性が評価され、長寿遺伝子SIRT1の活性化作用、冷え性・むくみ改善作用、更年期障害改善作用、体脂肪蓄積低減作用、体温低下抑制作用、抗炎症作用等が明らかにされています。
- アントシアニンは、植物界に広く存在する色素で、抗酸化物質として知られています。
- アピゲニンは、冷え性・むくみ改善、性能力改善、抗炎症作用、抗前立腺肥大等が明らかにされています。
- クリシンは、筋肉増強・体脂肪蓄積低減、性能力改善等が明らかにされています。
3. 黒ウコンの栽培・用途
黒ウコンは低温に弱い植物であり、栽培適地は沖縄以南とされ、露地栽培では連作障害が起こるなど多くの課題を抱えています。一方、黒ウコンの潜在的な需要(根茎乾物素材)は年々増加し、その量は予測し難いものとなっていますが、現状はほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。
そこで、国産黒ウコンへの強いニーズに応えて、組織培養苗生産・植物工場栽培技術の開発、露地栽培技術の改善等が行われ、国産黒ウコン100%の「Black Ginger Powder」や「黒ウコンカプセル」が健康食品として市販される情況に至っています。
4. 機能性表示食品制度では、丸善製薬(株)のサプリメント商品「ブラックジンジャー」
機能性関与成分を5,7-ジメトキシフラボンとしています。そして「ブラックジンジャー由来5,7-ジメトキシフラボンは中高年齢者において加齢により衰える歩行能力の維持に役立つことが報告されています」と表示しています。
そのほかにも、黒ウコンの機能性表示に向け、各社がシステマティクレビューを進めているようです。 O社の黒ウコン利用におけるアンケート調査では、冷え性・むくみ、性能力向上及び体調に関する項目で高い改善率(改善・やや改善の割合が60~70%%)が得られています。機能性食品摂取による体感が、食品やサプリメントとして食していく上で重要なポイントになります。
黒ウコンを原料とした健康食品の提供により、高齢化社会における国民の健康、QOLの向上に寄与することが大いに期待されます。